令和4年度より建退共履行証明書の発行基準が実質厳格化されました。これにより今年度は履行証明の発行ができなかったという建設業者さんのお話をよく聞きます。
ただ建退共については、基準を満たしていなかった場合でも例外的に発行できるケースもあります。今回は厳格化された建退共の基準について解説します。
尾西先生、建退共履行証明って急に発行基準が厳しくなりましたよね?
そうですね、建退共履行証明書については経営事項審査でも大きな加点対象になっているのですが、発行ができずに困っていらっしゃる会社さんも多いと聞いてます。
やはり発行基準に満たないと履行証明の発行は難しいのですか?
原則は新しい発行基準に沿って発行頂くことになりますが、基準に満たなかった場合でも例外的に履行証明書が発行できるケースなどもありますよ。
建退共履行証明について、そのあたりも含めて詳しく教えてもらえますか?
わかりました。新しい発行基準についてや基準に満たなかった場合でも例外的に履行証明書が発行できるケースなど、今回は建退共履行証明について解説していきます。建退共履行証明の発行でお困りの方は是非ご一読ください。
厳格化された新たな基準について
これまでは建退共の履行証明書については、決算期間内に証紙の購入がなかった場合でも後から証紙を購入すれば履行証明書が発行されるというような救済措置がありましたが、令和4年度からはこのような措置がなくなり決算期間内での証紙購入などが必須になりました。
今回に改定された建退共履行証明書の発行基準については、大きく次の二つになります。
上記の2つの基準を満たさないと、建退共履行証明書については原則発行されません。2つの基準についてそれぞれ解説していきたいと思います。
決算期間内に両方の条件を満たさないと履行証明が発行できないんですね。
その通りです。次の項目からは1.2のそれぞれの条件について解説していきます。
1.決算期間内に、被共済者数に見合う共済手帳の更新があること
「1.決算期間内に、被共済者数に見合う共済手帳の更新があること」についてですが、決算期間内に被共済者の人数分だけ手帳の更新がなくてはなりません。
例えば、3月決算の会社で共済者が3人いれば、4月~3月の間に原則3回以上手帳の更新が必要です。
被共済者の人数分だけ更新が毎年必要になるんですね。
そうです。決算期間内に必ず共済者数に見合う共済者手帳の更新をしておきましょう。
手帳を規定数更新できなかった場合でも証明が発行できる場合
手帳を規定数(被共済者の人数分)更新できなかった場合についてですが、
<手帳を規定数更新できなかった場合でも証明が発行できる場合>
1.加入後一年未満
2.季節労働者、高齢、病弱等個人的な理由により年間就労日数が少ない
3.電子申請方式により掛金が納付されている方
上記の1~3の理由で年間の出勤が250日未満だった場合は、手帳の更新をしていなくても履行証明が発行できる場合があります。
これらの理由で出勤が250日満たなかった場合は、建退共協会に「出勤簿」を提出して正当な理由で250日未満だったということを主張する必要があります。
出勤簿については特に様式の指定はありません。出勤日数がわかるものであれば問題ないかと思います。下記に出勤簿の記載例を載せています。
出勤簿を提出し、規定数更新できなかったことに正当な理由があったと認められれば、履行証明の発行ができます。
なるほど、正当な理由で年間の出勤日数が250日より少ないときは手帳の更新ができていなくても、基準に違反するわけではないんですね。
そうです、正当な理由があり出勤日数が足らずに手帳を更新できなかった場合は、出勤簿を作成して協会に提出して更新ができなかった旨を伝えましょう。
2.決算期間内に、被共済者の就労日数に応じた証紙の購入があること
「2.決算期間内に、被共済者の就労日数に応じた証紙の購入がある」ついては、原則1人¥80,640(令和3年9月以前の始期決算は¥78,120)以上の購入が必要です。
例えば、被共済が3人いれば、3×80,640で¥241,920の購入が決算期間内に必要です。
毎年、規定の金額に応じた証紙の購入が必要なんですね。
その通りです。履行証明の発行を希望する場合は、決算期間内にいくらの証紙の購入が必要になるのか、しっかり確認しておきましょう。
証紙の購入額が規定の金額に満たない場合でも証明を発行できる場合
証紙の購入額が規定の金額に満たなかった場合、建退共履行証明は発行されません。ただし規定の金額に満たなかった場合でも下記1.2に該当する場合は例外的に履行証明が発行される場合があります。
<証紙の購入額が規定の金額に満たない場合でも証明を発行できる場合>
1.加入後一年未満
2.季節労働者、高齢、病弱等個人的な理由により年間就労日数が少ない
「1.加入後一年未満」の方については、加入~決算月の月数×¥6510以上の額を購入している必要があります。
「2.季節労働者、高齢、病弱等個人的な理由により年間就労日数が少ない」方については、年間の就労日数×310円以上であることが必要です。
1.2に該当する方がいる場合で証紙の購入額が規定に満たなかった場合は、上記の条件を条件を満たせば履行証明発行の基準に該当することになります。出勤日数が少ないことについては出勤簿を提出して証明しましょう。
出勤簿を提出して、正しい出勤日数を証明すれば履行証明が発行されます。
なるほど、必要な証紙の購入金額は加入1年未満などの状況によっても異なってくるんですね。
そうですね、また上記1.2のような正当な理由がなく購入が足りていない場合でも、前年に余分に買っていた繰越し分があれば、繰越し分を受払簿に書いて必要な購入金額に達した場合は履行証明の発行が認められる場合があるようです。
ただし決算後に証紙を買い足ししても買い足しした分は認められませんので注意が必要です。
被共済者が0人の場合に履行証明を発行してもらう条件
被共済者が0人の場合、「決算期間内に被共済者数に見合う共済手帳の更新数があること」や「決算期間内に被共済者の就労日数に応じた証紙の購入があること」という基準は適用されません。
被共済者が0人の場合は、下記の条件を満たす必要があります。
<被共済者0人の場合に履行証明を発行してもらう条件>
1.決算期間内に下請会社に証紙を交付していること(工事期間の日数×下請会社の被共済者数分の交付)
2.履行証明願、共済証紙受払簿と一緒に「建退共制度に係る被共済者就労状況報告書」を提出する
※決算期間内に下請に交付する証紙は必ずしも決済期間内に購入したものでなくてもいいようです。
※上記要件を満たした場合でも、必ず履行証明が発行できるわけではなく、履行証明書が発行できるかどうかは、協会の判断になります。
被共済者就労状況報告書の様式については、建退共済事業本部のHPでダウンロードが可能です
被共済者0人でも履行証明はでるんですね
被共済者0人の場合も発行条件をしっかり理解しておきましょう
最後に
建退共については経営事項審査でも大きな加点対象になりますので、発行基準に満たずに発行出来なかった場合でも例外的に発行できるケースに該当しないかどうかをしっかり確認しましょう。
弊所でも経営事項審査申請の代行を承っておりますので、お困りの方はお問合せください。