建設業許可の経営事項審査については、改正が早く昨年もCPDやキャリアアップシステムを審査対象にするなどの追加がありました。令和5年についても改正が予定されている項目があります。
経営事項審査は令和5年も改正があるんですか、前に改正されたばかりのような気がしますが…
経営事項審査の基準も時代の流れに沿って変更を進めていかないと審査に不平等が生じてしまう場合もありますからね。
尾西先生、さっそくですが今回の改正のポイントについて解説頂けますか?
わかりました。今回は2023年に改正が予定されている経営事項審査の項目について、改正の内容を順に解説していきたいと思います。
「エコアクション21」を評価対象へ
現在、「その他の審査項目(社会性等)」において、環境配慮に関する取組への評価として「ISO14001」が評価対象になっていますが、これに加え「エコアクション21」を新たな評価対象として加えることが予定されています。
エコアクション21はISO14001に比較して認定の審査基準が少なく、認証手続きも簡単とされています。
なお、ISO14001が5点評価とされていますが、エコアクション21の評価点は3点が想定されています。ただし、ISO14001とエコアクション21のいずれも認証を取得している場合は評点は合算せず、5点のみ評価が想定されています。
つまり、以前からISO14001を取得されている会社さんにはとくに影響のない改正と言えますね。
そうですね、ISO14001を取るのはハードルが高いけど、エコアクション21なら取得できそうという業者さんにはプラスになる改正です。
CCUS(建設キャリアアップシステム)を現場で導入している元請企業を評価
下請人に使用される者の労働条件に係る取組として、CCUS(建設キャリアアップシステム)を現場で導入している元請企業が評価の対象になります。
CCUSを導入している元請企業は自らの負担により、技能者の労働条件の改善に相応の役割果たしていると考えられ、また各都道府県発注工事においてもCCUSの企業評価への導入する動きが広がりつつある状況です。
そこでCCUSを現場で導入している元請企業を経営事項審査で評価することが妥当ではないかと国土交通省が考えているようです。経審での評価要件や評点の想定は以下の様になっています。
会社がCCUSの導入をすれば、加点対象になるというわけですね
はい、ただし審査基準日以前1年間のうちに審査対象工事を1件も発注者から直接請け負っていない場合は加点されないとなっています。
ワーク・ライフ・バランスに関する取組とし「くるみん認定」等を受けている企業を評価
WLB(ワーク・ライフ・バランス)に関する取組についても、担い手の育成・確保に資するものであり、WLBに取り組む会社を評価の対象とすることが想定されています。
ワーク・ライフ・バランスとは「働くすべての方々が、『仕事』と育児や介護、趣味や学習、休養、地域活動といった『仕事以外の生活』との調和をとり、その両方を充実させる働き方・生き方」のこと。仕事がうまくいっていると私生活でも心のゆとりを持つことができ、また、私生活が充実することで仕事のパフォーマンスも上がるという好循環を目指します。
WLBには認定制度があり、認定を受けた企業を評価の対象としています。WLBに関する認定制度としては、「くるみん認定」「えるぼし認定」「ユースエール認定」などが存在しており、これらの認定をうけた企業が評価の対象になる予定です。経審上の評点は以下の通りです。
対象の認定を複数取得すれば、それだけ点数も増えるということですか?
いいえ、複数の認定を取得している場合は、最も評点の高い認定での加点になります(最大5点)
えるぼし認定、くるみん認定、ユースエール認定の概要やメリット、認定基準については下記ブログで解説しています。
建設機械の評価対象機械の追加
建設機械については、既存の6業種の他に加点対象を拡大することが想定されています。具体的には「ロードローラ、振動ローラ、ブレーカ、解体用掴み機、高所作業車等」が新規加点となっています。
また現行では、ダンプ規制法の対象となる最大積載量5t以上の大型ダンプのみが対象となっていましたが、改正後は土砂の運搬が可能なすべてのダンプを加点対象とすることが予定されています。
なるほど、加点対象の建設機械が増えたので、これまで建設機械が加点対象になっていなかった会社さんも今持っている機械が加点対象になるかもしれないってことですね。
そうですね、これらの中でお持ちの対象機械があれば経審時に建設機械の保有ありとして申請しましょう。なお、建設機械を加点対象するには申請時に売買契約書、リース契約書、特定自主検査記録表の写しなどが必要になりますので準備しておきましょう。
監理技術者講習の有効期間の見直し
監理技術者講習の有効期間について、これまでの有効期間は監理講習を受けた日から5年間となっていましたが、改正後は講習を受講した日から受講した年の5年後の12月31日までが有効となることが予定されています。
これにより有効期限が延長され、受講者も都合の良い時期に受講がしやすくなることが想定されています。
これってけっこう前に監理者講習自体の有効期限は5年後の12/31までに変更されていたのに、経営事項審査で変更が適用されていなかったので、ややこしかったんですよね。
そうですね、監理技術者講習の有効期間は数年前にすでに見直しされていましたが、経審における有効期間はこれまで受講日より5年間とされていました。今回の改正で経審においても見直しされた期間が適用されるようになります。
W点のP点換算係数の変更
その他の審査項目(社会性)(W)については、現行の算出式ではP点換算係数は1.425となっていましたが、改正後の算出式ではp点換算係数は1.3125に変更されます。これにより、2023年1月からはW点の各点数に「1.3125」をかけた点数が経審評点P点へ影響します
W点(社会性)におけるP点への換算率が若干下がるということになりますね。
そうですね、若干ではありますがW点におけるP点への換算率が下がってしまうので、新しく加点対象になった「くるみん認定」や「えるぼし認定」などの取得などカバーしたいところですね。
最後に
いろいろと改正した部分があるんですね。経営事項審査の申請書も令和5年から様式が少し変わっているみたいだし、気をつけないと。
P点の点数を気にされる事業者さんも多いと思いますので点数に関わる内容をしっかり把握しておくことが大事だと思います。
当事務所では経営事項審査申請の代行を承っておりますので、お困りの方はお気軽にお問合せください。