経営事項審査申請(経審)の見方や、おさえるべきポイントと点数の上げ方について

建設業許可をお持ちの建設業者さんでも入札参加資格申請に申し込みしたい場合は、経営事項審査申請(経審)が必要になります。経審の点数によって業者さんのランク付けが決まるので、経審で点数を気にされる建設業者様は沢山いらっしゃいます。

経営事項審査審査申請の仕事を受けた行政書士の方でも、お客様から「点数をあげるにはどうすればいいですか?」と相談された方も多いのではないでしょうか。

ただ経審において点数の構成は非常に複雑になっており、経審をあまり扱われていない行政書士の方だと点数に関しての質問に即答するのはなかなか難しいと思います。そこで今回は経審の見方やおさえるべきポイントと、点数の上げ方などについてわかりやすく解説していきます。

目次

点数の構成について

まずは経営事項審査の点数の構成についてみていきたいと思います。下記は経営事項審査結果通知書の見本をもとにした点数構成の内容です。


点数でまず一番大事なのがP点:総合評定値となっており、このP点が業者としての点数になります。このP点をもとに入札業者のランク付けがされます。P点は建築一式工事〇〇点、内装工事〇〇点のように各工事ごとに点数がつきます。

なお、P点はX1点、X2点、Z点、Y点、W点で構成されており、算出式は以下のようになります。

P点:総合評定値の算出式 = X1×0.25+X2×0.15+Y×0.2+Z×0.25+W×0.15

式でみると複雑なのですが、要はP点というのは、X〜Wのそれぞれの点数の何割かで構成された総合点だということです。つまりP点をあげるためには、 X~W点(経営規模、経営状況、技術力、社会性)の各項目の点数をあげることが必要ということになります。

P点の点数を上げるためには、理想としてはX~Wまでの点数をまんべんなく上げることです。ただ現実的にはX~Wまですべてを上げていくというのはなかなか難しいと思いますので、次の項目では優先的に着目すべきところからあげていきます

W点(社会性等)についてを見直す

P点を上げたいと考えたときに、まずW点(社会性等)から見直していくのが定石といえます。なぜW点から見直すのかというと、W点の項目は全業種に大きく点数が加点されるものが多いからです。特に重要なのが下記3つになります。

1.建退共への加入
2.退職一時金制度または企業年金制度への加入
3.法定外労災への加入

これらの項目はW点で15点加点となり、それぞれP点に換算した時、経審を受けようとするすべての業種へ21点の加算となるので非常に大きな加点となります。業種全体のP点を底上げしたいときには是非とも加点対象にしておきたい項目です。それぞれコストがかかるものではありますが、重要な要素であるために大きな加点対象になっています。

1.建退共への加入
建退共とは「建設業退職金共済制度」のことであり、事業主が建設現場で働く労働者に 働いた日数に応じて掛金を納付し、 その労働者が建設業界をやめたときに 退職金を支払うという業界退職金制度です。建退共へ加入し掛金納をすることで加点対象になります。経審の際には確認書類として建退共協会で発行される「加入履行証明書」が必要になります。(加入履行証明は令和4年度から発行基準が厳格化されました。下記参照)

2.退職一時金制度または企業年金制度への加入
退職一時金制度とは従業員が勤めていた企業から退職時に退職金を受け取る制度です。企業年金とは従業員の退職後の生活を保障するため、企業が原資を拠出し支給する年金を指します。加点の条件は下記のようになります。
・中小企業退職金制度または、特定退職金制度への加入
・退職金制度に係る労働協約または、自社の就業規則に退職金を支給する旨を定めており、かつ支給規定があること(就業規則については10人以上の労働者を使用している場合には労働基準監督署の届出印があること)

企業年金とは、従業員の退職後の生活を保障するため、企業が原資を拠出し、支給する年金を指します。加点の条件は下記のようなものになります。
厚生年金基金への加入
・確定拠出年金法に基づく企業型年金への加入または、確定給付企業年金への加入

3.法定外労災への加入
法定外の労災保険は業務上や通勤途上に災害を被り死亡、重度の身体障害を残した場合、または傷病の状態にある場合に国の労働災害補償保険(労災保険)とは別に上乗せ給付等を行うことを目的とした保険です。加点対象にするには下記の要件をすべてみたしていることが必要です。
・業務災害及び通勤災害のいずれも対象であること
・職員及び下請負人の全てが対象であること
・死亡及び障害等級第 1 級から第 7 級までが対象であること
・ 全ての工事現場を補償していること

建設業の経理の状況の加点について
上記3つ以外のW点の項目では「建設業の経理の状況」についてもおさえておきたいポイントです。公認会計士、税理士や登録経理士などがいらっしゃれば加点の対象になります。対象の資格をお持ちの方がいらっしゃれば必ず加点するようにしましょう。(技術職員と兼任可。常勤性の疎明書類が必要になります)

特に下記の資格をお持ちの方がいらっしゃれば「経理処理の適正を確認した旨の書類」に署名することが可能であり、署名した書類を提出すれば加点の対象になります。

経理処理の適正を確認した旨の書類に署名できる資格
・公認会計士
・会計士補
・税理士
・公認会計士、会計士補、税理士となる資格を有する者
・登録経理士試験の1級合格者

その他の加点対象について
「防災活動への貢献」もかなり点数が上がるので、押さえておきたいポイントです。防災活動への貢献とは災害が起こった際に、官民で協力体制を整えて優先的に応急工事を行うといったことが基本となっています。また建設業に限らず、例えば、災害時の物資輸送支援など復興・生活支援活動に一定の役割を果たすことが確認できる場合は、加入ありと認めらることもあります。加点対象にするには「防災協定書」や「所属する団体の加入を証明する書類」などが必要になります。

また建設機械(ショベル系掘削機、ブルドーザー、大型ダンプなど)をお持ちの会社であれば、「建設機械の保有状況」で加点対象になります。加点対象にするには特定自主検査や車検が必要になりますので、加点できるように審査基準日時点で検査が有効かどうかをしっかりと確認しておきましょう。

なお建退共履行証明書については令和4年度より発行基準が厳格化され、以前よりも発行が難しくなりました。今年度より発行ができなくなり、点数が大幅に下がってしまった業者さんも多いのではないでしょうか。ただ建退共についても例外的に発行できる場合などがあります。建退共履行証明書の新しい発行基準については下記のブログで解説していますので、建退共履行証明の発行でお困りの方は是非ご一読ください。

Y点(経営状況分析評点)の改善

続いてみていきたいのがY点(経営状況分析評点)についてです。Y点は財務諸表の内容を点数化したもので、Y点だけは行政庁ではなく、経営状況分析期間が分析を行い点数をだしています。

Y点についてもP点の構成に大きなウエイトを占めていますので、Y点を改善することによってもP点の向上に貢献します。Y点の主な改善ポイントは以下のようになります。

1.支払利息を下げて受取利息を正確に計上する
2.利益を増やす
3.資産、負債を減らす
4.資本金、利益剰余金を増やす

1.支払利息を下げて受取利息を正確に計上する
受取利息は多く、支払利息は少ない方が点数は高くなります。税理士さんが作成された決算書の雑収入の中には受取利息が混ざってしまっている場合があります。雑収入のなかに受取利息があるにもかかわらず、建設業の財務諸表でもすべて雑収入としてあげてしまうと、受取利息として計算をしてもらえないので、実態よりも低い点数が算出されます。内訳書までしっかり確認し、もし雑収入の中に受取利息が入ってしまっているなら、受取利息へ振り替える必要があります。

2.利益を増やす
売上総利益、営業利益、経常利益は点数に影響する項目になります。利益率が高いほうが点数も高くなります。経審では利益を高くしたいので、原価でないものは原価から省きたいのです。方法としては工事原価の中で「販売費及び一般管理費」へ振り分けできそうなものがないか見直しするなどがいいと思います。ただし、実態反映というのは鉄則ですので、原価であるものを無理やり販売費及び一般管理費へ振り分けしてしまうのは絶対にダメです。

3.資産、負債を減らす
財務比率をよくするために利益を上げることは有効ですが、現預金以外の資産、例えば売掛金、在庫、固定資産を減らし、そして有利子負債も減らすと各種の財務比率もよくなってきます。いわゆるキャッシュフローをよくすることも評点アップのポイントです。

4.資本金、利益剰余金を増やす
経審では自己資本額が多いほど点数アップにつながります。自己資本額とは、貸借対照表の負債純資産合計から負債を引いた純資産のことを言います。自己資本額を増やすためには、資本金を増やすか、利益剰余金を増やすという対策が考えられます。

Y点についてはしっかりした知識がないと本来の点数よりも下がってしまうこともあるので、しっかりと内容を理解しておきましょう。また経営状況分析申請の前に改善できるところがないか見直すことも大事です。

Z点(技術職員名簿)を見直す

Z点についてもP点を構成するのに重要な要素です。Z点は元請工事高や技術力、技術職員数などで構成されていますが、技術力や技術職員数を採点する技術職員名簿は非常に重要な要素です。技術職員名簿においての見直しポイントは以下の内容です。

1.実務経験者で記載忘れがないか確認する
2.国家資格一級の方は監理技術者講習しているか確認する
3.CPD取得単位者やキャリアアップシステムのレベル向上者がいないか確認する

1.実務経験者で記載忘れがないか確認する
資格等がなくとも10年以上の実務経験者(所定学科卒業の場合短縮可。高卒5年、大卒は3年)は技術職員名簿に記載できます。現在記載されている資格者以外で実務経験者に該当する方がいないか確認しておきましょう。

2.国家資格一級の方は監理技術者講習しているか確認する
一級資格を持っている方については、監理技術者証を持ち、かつ監理技術者講習を受けている場合に更に加点になる項目です。一級資格を持っていても講習を受講してないと加点されません。講習を受けて、事務手続きをすれば加点がとれる項目なので確実に取りたいところです。

3.CPD取得単位者やキャリアアップシステムのレベル向上者がいないか確認する
CPDと建設キャリアアップシステム(CCUS)は2021年から加点対象になった項目です。最近加点対象になったので、まだご存知でない業者さんもいらっしゃるかもしれません。経営事項審査では、CPDでは審査日基準日以前1年間に取得したCPD単位の平均値により評価されます。キャリアップシステムは認定能力評価基により受けた評価が審査基準日以前3年間でレベルが1以上向上した人の割合により評価されます。CPDとキャリアップシステムについては内容が少し複雑なので下記のブログで詳しく説明しています。

なお2021年4月より、1級技士補 が経営事項審査の技術職員として加点対象になっています。技士補についても下記のブログで詳細を記載しています。

X1(平均完成工事高)について

完成工事高をあげることも点数アップにつながります。X1については審査基準日の直前2年平均または3年平均の完成工事高が評価されます。工事高の2年平均か3年平均は選択することができます。どちらを選択するとP点が有利になるか、事前にしっかりとシュミレーションをしておくことが大事です。2年平均か3年平均かは業種ごとに選べるわけではなく、受審するすべての工事に適用されるので、2年平均を選べば、すべての業種が2年平均で計算されます。ですので、お客さまがどの業種の点数を重視されているのか事前に確認しておく必要があります。

また完成工事高は元請か下請けかでも点数は変わってきます。同じ金額の工事なら元請工事の方が評価が高いということになります。元請、下請けはしっかりと振り分けできているかシュミレーションする前に確認をしておきましょう。

審査基準に改正がないかを毎年確認する

他に点数アップのポイントとしては経営事項審査の審査基準に改正がないか、経審を受審する前に毎回確認することが必要だと思います。

改正によってポイントが加算されるケースもあれば、逆に改正によって今まで加点対象になっていたものが加点されなくなったということもあり得ます。

例えば最近でも、CPDやキャリアアップシステムの登録があれば加点対象なったり、1級技士補が技術職員として加点対象になるようになりました。

他にも建設業経理士合格者が従来加点対象でしたが、今後も加点対象にするには講習受講が必要になるなど(現在は経過措置期間の為、講習がなくとも加点対象)の改正がありました。

経営事項審査申請の審査基準も時代に合わせて変化していきますので、変化に合わせてうまく点数が獲得できるように対応が必要です。

改正は数年に一度は行われているので常に気を配る必要があります。2023年以降の改正については下記のブログで解説しています。

最後に

今回は経営事項審査申請について解説してきましたが、いかかでしたでしょうか?

経営事項審査申請は奥深いもので、今回紹介したポイントのほかにも気をつけたい点などは沢山あります。ただ今回にご紹介したポイントをしっかりと理解しておけば、経審ではある程度レベルに達することができると思います。

経審は入札参加資格に関する大切な申請になりますので、要点をしっかり押さえておきましょう。なお弊所でも経営事項審査申請の代行を行っております。弊所ではP点が何点とれるかなどのシュミレーションも事前に行っておりますので、経営事項審査申請でお困りの方はお問合せください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

平成28年開業。
大阪市中央区の行政書士事務所です。
建設業許可等の申請代行を中心に取り扱っております。

目次