経審が必要なケースと不要なケースの見分け方

鹿野行政書士

お客様から「経審(経営事項審査)って、うちは必要なんでしょうか?」という問い合わせがきました

尾西行政書士

建設業者の方から、よく聞く質問です。建設業許可は持っているものの、公共工事はやっていない、あるいは将来やるかどうかも分からない。このような状況では、経審が必要なのか・不要なのか判断がつきにくいのが実情ではないでしょうか

鹿野行政書士

では尾西先生、そのあたり詳しく解説お願いします

尾西行政書士

今回は、「経審が必要なケースと不要なケースの見分け方」について解説します

目次

第1章:経審(経営事項審査)とは何か

1-1. 経審の目的と建設業法上の位置づけ

経審(経営事項審査)とは、公共工事を発注する側が、建設業者の経営状況や技術力を客観的に評価するための制度です。

建設業法では、

公共工事を直接請け負う建設業者は、経営事項審査を受けなければならない

と定められています。

重要なのは、
**「すべての建設業者」ではなく、「公共工事を元請で受注する建設業者」**が対象だという点です。

つまり民間工事のみ、公共工事でも下請のみという場合には、原則として経審は不要です。

1-2. 経審の結果(総合評定値)が何に使われるのか

経審を受けると、「総合評定値(P点)」という数値が算出されます。

この数値は、会社の規模、財務内容、技術職員の人数、過去の工事実績などを点数化したものです。そしてこの総合評定値は、入札参加資格審査で必ず使用されます。

P点は、会社の規模、財務内容、技術職員の人数、過去の工事実績などを点数化したもの

流れを整理すると、次のようになります。

経審を受ける
 ↓
総合評定値(P点)が出る
 ↓
入札参加資格審査で評価される
 ↓
公共工事の入札に参加できる

この流れからも分かる通り、
**経審は「入札に参加するための前提条件」**なのです。

鹿野行政書士

経営事項審査は入札参加するには、必須の前提条件ってことですね

尾西行政書士

そのとおりです、なお、経営事項審査の結果通知書の見方については下記記事で解説しています

第2章:経審が必要になるケース

2-1. 公共工事を「元請」として受注したい場合

結論から言えば、これが唯一にして最大の必須ケースです。

  • 国・自治体などが発注する公共工事を
  • 元請(直接契約)で
  • 入札に参加して受注したい

この場合、経審は必須です。経審を受けていない建設業者は、入札に参加することすらできません。

2-2. 入札参加資格審査との関係(経審+名簿登録)

公共工事を受注するためには、

  1. 経審を受ける
  2. 入札参加資格審査を申請する
  3. 入札参加者名簿に登録される

という3ステップが必要です。

よくある誤解が、「名簿登録だけすれば入札できる」というものですが、経審がなければ名簿登録自体ができません。

経審は「入口」、名簿登録は「スタートライン」と考えると分かりやすいでしょう。


2-3. 国・自治体・独立行政法人が発注者となるケース

発注者が次のような場合は、基本的に公共工事扱いとなります。

  • 国(国土交通省など)
  • 都道府県、市区町村
  • 独立行政法人
  • 公社、公団、外郭団体

これらと元請契約を結ぶ場合、発注金額の大小にかかわらず、原則として経審が必要です。

鹿野行政書士

国・自治体などが発注する公共工事を元請(直接契約)で入札に参加して受注したい場合は必要なわけですね

尾西行政書士

次の段落では、経審が不要なケースも解説していきます

第3章:経審が不要なケース

3-1. 民間工事のみを請け負う場合

最も多い「経審不要」のケースです。

  • 民間企業
  • 個人施主
  • 不動産会社

上記の工事のみであれば、建設業許可があっても経審は不要です。

この場合、

  • 経審未受審
  • 入札参加なし

でも、違法ではありません。


3-2. 公共工事でも「下請のみ」の場合

公共工事に関わっていても、

  • 元請ではなく
  • 下請として工事に入っているだけ

という場合、経審は不要です。

元請業者が経審を受けていれば、下請業者まで経審を受ける必要はありません。


3-3. 建設業許可はあるが受注形態が限定されている場合

次のような事業者も、経審は不要なケースが多いです。

  • 元請だが民間工事のみ
  • 公共工事は今後もやる予定がない
  • 下請専門で事業を続けている

「建設業許可がある=経審が必要」ではない点は、しっかり押さえておきましょう。

鹿野行政書士

なるほど、建設業許可を受けている業者すべてに必要ではないわけですね

尾西行政書士

ただし、下請けでも発注者から経審を求められるケースはあるので、その点は気をつけましょう

第4章:「必要・不要」で判断を誤りやすい注意ケース

4-1. 元請・下請の立場があいまいな契約形態

注意が必要なのが、

  • 形式上は下請
  • しかし実態は発注者と直接やり取りしている

といったケースです。

契約書の名義や契約関係によっては、「元請」と判断される可能性もあります。


4-2. 将来的に公共工事を視野に入れている場合

今は民間工事のみでも、

  • 数年後に公共工事に参入したい
  • 元請として入札に参加したい

と考えている場合、早めの経審取得を検討する価値があります。

経審は、

  • 決算変更届
  • 技術職員の確保

など、事前準備が重要です。


4-3. 発注者から経審を求められる特殊ケース

まれに、

  • 民間工事だが
  • 発注者側の内部ルールで
  • 経審を条件にしている

というケースもあります。

法的には必須でなくても、
取引条件として求められることがある点には注意が必要です。

鹿野行政書士

なるほど、どういうケースで必要か必要でないかがよくわかりました

尾西行政書士

それはよかったです

おわりに

経審は、
**「公共工事を元請で受注したい建設業者のための制度」**です。

必要な人にとっては必須、不要な人にとっては受けなくても問題ありません。

重要なのは、

  • 自社の受注形態
  • 将来の事業方針

を正しく把握し、無理に受けない・必要なら早めに動くことです。

「うちは経審が必要なのか?」
その答えを明確にしたい方は、一度立ち止まって整理することをおすすめします。

尾西行政書士

当事務所では経営事項審査申請のご相談を承っております

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この記事を書いた人

平成28年開業。
大阪市中央区の行政書士事務所です。
建設業許可等の申請代行を中心に取り扱っております。

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