建設業許可には「一般許可」と「特定許可」の2種類があります。特定建設業許可はざっくり言うと、下請業者さんにだす金額が4,000万円以上となるような大きい工事を請負する会社さんには必要になる許可です。
何やら特定建設業許可の財産要件が一般建設業許可より厳しいと聞いたんだが。
そうですね、特定建設業許可については、一般建設業許可より財産要件が厳しく、少しややこしいものになっています。
では尾西先生、ひとつ私にもわかりやすいよう説明してくれたまえよ。
わかりました。今回は特定建設業の財産的基礎要件についてわかりやすく解説します。
特定建設業許可の要件
特定建設業許可は一般建設業許可とは要件の違うところがあります。特定建設業許可で押さえるべきポイントとしては大きく次の2つになります。
うちの会社には1級の国家資格者が何人かいるのだが、1の条件については問題なさそうかね?
そうですね、1.の条件については常勤の方で1級免状をお持ちの方が専任技術者になるのであれば問題ありません。
では2の財産的基礎要件についてだが、具体的にどんな条件になっているのかね?
2の「特定建設業許可の財産的基礎」には細かく要件が決められており具体的には下記の条件になります。
<特定建設業許可の財産的基礎の要件>
①資本金の額が2,000万円以上であること
②自己資本の額が4,000万円以上であること
③流動比率が75%以上であること
④欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
次の段落からは財産的基礎の①~④についてそれぞれ解説していきたいと思います。
①資本金の額が2,000万円以上であること
特定建設業の許可を取るには、資本金が2,000万円以上であることが必要です。具体的には下記に示す通りです。
なお、申請までに資本金が2,000万円に不足している場合は、増資によって条件をクリアできることがあります。(各都道府県によって扱いが異なる場合がありますので、詳しくは各都道府県にご確認ください)
<資本金の増資による特例>
資本金の額について、申請直前の決算期における財務諸表では、資本金の額に関する基準を満たさないが、申請日までに増資を行うことによって基準を満たすこととなった場合には、資本金の額に関する基準を満たしているものとして取り扱います。※大阪府手引きより引用
資本金が足りない場合は、増資するという方法もあるのだね。
なお、資本金の増資による特例については都道府県によって取り扱いが異なる場合がありますので、ご注意ください。
②自己資本の額が4,000万円以上であること
特定建設業許可では、直近の決算の自己資本の額が4,000万円以上であることが必要です。自己資本とは具体的には次のようなものです。
「直近の決算の自己資本額」ということは、直近の決算で自己資本額が4,000万円未満の場合は、決算後に資本金などを増資して、自己資本額を増やしたところで認められないというわけかね?
はい、法人の場合は直近の貸借対照表における純資産の額が4,000万円以上必要になりますので、もし直前の決算で純資産が4,000万円に不足しそうであれば、「決算の前」に増資などで純資産を増額しておく必要があります。
決算後に資本金を増資しても申請では自己資本額が増えたとはみなされませんので注意が必要です。
③流動比率が75%以上であること
特定建設業許可では、直近の決算の流動比率が75%以上であることが必要です。流動比率とは具体的にはつぎのものになります。
ふむ、うちの会社の財務諸表では流動資産の額が流動負債の額を上回っているので問題ないと思うが、いかがかな?
そうですね、流動比率については流動資産が流動負債より多ければそれで問題ありません。流動負債の額が流動資産を上回るときは流動比率に注意しましょう。
④欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
特定建設業の許可では、直近の決算で欠損の額が資本金の額の20%を超えていないことが必要です。欠損の額とは具体的には次のようなものになります。
法人の場合は 欠損の額 ÷ 資本金額 × 100% が20%を超えていないこと
個人の場合は 欠損の額 ÷ 期首資本金額 × 100% が20%を超えていないこと
うちの会社では毎年、繰越利益剰余金がプラスなので問題はなさそうなのだよ。
そうですね、法人は直近の繰越利益剰余金がプラスであれば、それで問題ありません。
マイナスである場合に資本剰余金などの額を上回って資本金額の20%以上のマイナスがでてしまう場合は、特定許可の申請ができなくなるので注意です。
更新時の注意点
ふむ、うちの会社は財産的基礎要件も問題なさそうなのだよ。
それは良かったです。
ただ、特定許可になった場合は5年の更新ごとに毎回、財産的基礎要件をクリアしないといけないのだろうか?
その通りです。特定建設業許可は更新ごとに財産的基礎要件をクリアする必要がありますので、更新時に会社の財務状況が悪化していると特定許可更新できずに、一般許可を取り直しせざるを得ないというケースもありえます。
ふむ、それでは特定許可に変えるかどうかは会社の将来の財務状況も加味した上で判断したほうが良さそうと言えるのだね。
そうですね、特定建設業許可の取得を検討されている会社さんは、本当に特定建設業許可が必要かどうか慎重に判断頂いたほうがいいかと思います。
当事務所では建設業許可のご相談を承っておりますので、お困りの際はお問合せください。