特定建設業許可の財産的基礎要件について、資本金などの4つの条件を詳しく解説

建設業許可には「一般許可」と「特定許可」の2種類があります。特定建設業許可はざっくり言うと、下請業者さんにだす金額が4,000万円以上となるような大きい工事を請負する会社さんには必要になる許可です。

院古部長

うちの会社でも将来的には下請業者にだす金額が増えていきそうなので、特定許可を検討しているのだがね。

尾西行政書士

院古部長の会社は特定許可を検討中でなんですか、特定の条件は問題なさそうですか?

院古部長

そこなんだがね、何やら財産要件が一般許可より厳しいと聞いたんだが。

尾西行政書士

そうですね、特定建設業許可については、一般建設業許可より財産要件が厳しく、少しややこしいものになっています。

院古部長

そうなのかね、では尾西先生、ひとつ私にもわかりやすいよう説明してくれたまえよ。

尾西行政書士

わかりました。今回は特定建設業の財産的基礎要件についてわかりやすく解説します。

目次

特定建設業許可の要件

特定建設業許可は一般建設業許可とは要件の違うところがあります。特定建設業許可で押さえるべきポイントとしては大きく次の2つになります。

<特定建設業許可で押さえるべきポイント>
1.専任技術者に1級の国家資格者が必要
(指定7業種以外は一般の専任技術者要件+指導監督的実務経験でも可)
2.特定建設業許可の財産的基礎の要件を満たすこと

院古部長

うちの会社には1級の国家資格者が何人かいるのだが、1の条件については問題なさそうかね?

尾西行政書士

そうですね、1.の条件については常勤の方で1級免状をお持ちの方が専任技術者になるのであれば問題ありません。

院古部長

では2の財産的基礎要件についてだが、具体的にどんな条件になっているのかね?

尾西行政書士

2の「特定建設業許可の財産的基礎」には細かく要件が決められており具体的には下記の条件になります。

<特定建設業許可の財産的基礎の要件>
①資本金の額が2,000万円以上であること
②自己資本の額が4,000万円以上であること
③流動比率が75%以上であること
④欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと

尾西行政書士

次の段落からは財産的基礎の①~④についてそれぞれ解説していきたいと思います。

①資本金の額が2,000万円以上であること

特定建設業の許可を取るには、資本金が2,000万円以上であることが必要です。具体的には下記に示す通りです。

<資本金とは>
・法人にあっては株式会社は払込資本金、特例有限会社は資本の総額、合資会社や合名会社は出資金額
・個人にあっては期首資本金

なお、申請までに資本金が2,000万円に不足している場合は、増資によって条件をクリアできることがあります。(各都道府県によって扱いが異なる場合がありますので、詳しくは各都道府県にご確認ください)

資本金の増資による特例>
資本金の額について、申請直前の決算期における財務諸表では、資本金の額に関する基準を満たさないが、申請日までに増資を行うことによって基準を満たすこととなった場合には、資本金の額に関する基準を満たしているものとして取り扱います。
※大阪府手引きより引用

院古部長

資本金が足りない場合は、増資するという方法もあるのだね。

尾西行政書士 

なお、資本金の増資による特例については都道府県によって取り扱いが異なる場合がありますので、ご注意ください。

②自己資本の額が4,000万円以上であること

特定建設業許可では、直近の決算の自己資本の額が4,000万円以上であることが必要です。自己資本とは具体的には次のようなものです。

<自己資本とは>
・法人にあっては貸借対照表における「純資産の額」
・個人にあっては貸借対照表における「期首資本金、事業主借勘定及び事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金を加えた額」

院古部長

「直近の決算の自己資本額」ということは、直近の決算で自己資本額が4,000万円未満の場合は、決算後に資本金などを増資して、自己資本額を増やしたところで認められないというわけかね?

尾西行政書士 

はい、法人の場合は直近の貸借対照表における純資産の額が4,000万円以上必要になりますので、もし直前の決算で純資産が4,000万円に不足しそうであれば、「決算の前」に増資などで純資産を増額しておく必要があります。

尾西行政書士

決算後に資本金を増資しても申請では自己資本額が増えたとはみなされませんので注意が必要です。

③流動比率が75%以上であること

特定建設業許可では、直近の決算の流動比率が75%以上であることが必要です。流動比率とは具体的にはつぎのものになります。

<流動比率とは>
貸借対照表の流動資産を流動負債で割り、得た数値を百分率で表したもの

  【流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100%】
(例:流動資産合計額が2,500万円、流動負債合計額が3,000万円の場合は流動比率は約83%
)

院古部長

ふむ、うちの会社の財務諸表では流動資産の額が流動負債の額を上回っているので問題ないと思うが、いかがかな?

尾西行政書士

そうですね、流動比率については流動資産が流動負債より多ければそれで問題ありません。流動負債の額が流動資産を上回るときは流動比率に注意しましょう。

④欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと

特定建設業の許可では、直近の決算で欠損の額が資本金の額の20%を超えていないことが必要です。欠損の額とは具体的には次のようなものになります。

<欠損の額とは>
・法人にあっては貸借対照表の繰越利益剰余金がマイナスである場合にその額が資本剰余金、利益準備金および任意積立金の合計額を上回る額
・個人にあっては貸借対照表の事業主損失が事業主借勘定から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金を加えた額を上回る額

法人の場合は 欠損の額 ÷ 資本金額 × 100% が20%を超えていないこと
個人の場合は 欠損の額 ÷ 期首資本金額 × 100% が20%を超えていないこと

院古部長

うちの会社では毎年、繰越利益剰余金がプラスなので問題はなさそうなのだよ。

尾西行政書士 

そうですね、法人は直近の繰越利益剰余金がプラスであれば、それで問題ありません。

尾西行政書士

マイナスである場合に資本剰余金などの額を上回って資本金額の20%以上のマイナスがでてしまう場合は、特定許可の申請ができなくなるので注意です。

更新時の注意点

院古部長

ふむ、うちの会社は財産的基礎要件も問題なさそうなのだよ。

尾西行政書士

それは良かったです。

院古部長

ただ、特定許可になった場合は5年の更新ごとに毎回、財産的基礎要件をクリアしないといけないのだろうか?

尾西行政書士

その通りです。特定建設業許可は更新ごとに財産的基礎要件をクリアする必要がありますので、更新時に会社の財務状況が悪化していると特定許可更新できずに、一般許可を取り直しせざるを得ないというケースもありえます。

院古部長

ふむ、それでは特定許可に変えるかどうかは会社の将来の財務状況も加味した上で判断したほうが良さそうと言えるのだね。

尾西行政書士

そうですね、特定建設業許可の取得を検討されている会社さんは、本当に特定建設業許可が必要かどうか慎重に判断頂いたほうがいいかと思います。

尾西行政書士

当事務所では建設業許可のご相談を承っておりますので、お困りの際はお問合せください。

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この記事を書いた人

平成28年開業。
大阪市中央区の行政書士事務所です。
建設業許可等の申請代行を中心に取り扱っております。

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