令和3年改正、経営業務管理責任者の要件緩和、「常勤役員と常勤役員を直接に補佐する者」について要件や確認書類などをわかりやすく解説

建設業許可の経営業務管理責任者に関する省令の一部改正があり要件が緩和されました。

これまで経営業務管理責任者となる方については、建設業に関し5年以上の経営または、補佐(役員に準ずる地位)の経験6年が必須となっていました。

しかし、もし常勤役員の方にこれらの経営経験がなくとも、「常勤役員を直接に補佐する者」がいれば、経営業務管理責任者になれるというルールが追加されました。

尾西行政書士

建設業に関し5年以上の役員経験等があれば、従来どおり1人で経営業務管理責任者になれるのでそれで問題はありません 

尾西行政書士

ただ昨今の建設業界は深刻な人手不足にあり、建設業での一定以上の経営経験を積んでいる人材の輩出が難しくなってきています

宇佐山さん

今回の改正で建設業での経営経験が5年未満の方でも経営業務管理責任者になれる可能性がでてきたので、人手不足の建設業界への救済措置になりえる制度と言えますね

尾西行政書士

確かに救済措置とも思える制度ですが、「常勤役員と常勤役員を直接に補佐する者」 に関する規定や提出書類などが中々ややこしいものになっています

宇佐山さん

え、何か難しい内容なんですか?ではでは尾西先生、くわしく解説してもらえますか?

尾西行政書士

わかりました、今回は「常勤役員常勤役員を直接に補佐する者」 について規定や要件などをわかりやすく解説していきたいと思います

目次

「常勤役員」と「常勤役員を直接に補佐する者」

今回の改正で「常勤役員」の方が建設業に関し5年以上の役員経験がない場合でも、 「常勤役員を直接に補佐する者」がいれば、経営業務管理責任者になることができるようになりました。

 常勤役員(建設業経験5年未満) +  常勤役員を直接に補佐する者  
 <常勤役員の建設業での経営経験が5年未満でも補佐する者がいれば経営業務の管理責任者になることができるようになった>

宇佐山さん

常勤役員(経営業務管理責任者)に従来の建設業での経営経験が足りない場合に「補佐する者」を置くということですね

尾西行政書士

そうです、そして「常勤役員」と「常勤役員を直接に補佐する者」にはそれぞれ要件があります、それぞれの要件については次の項目から順次解説しています

常勤役員の要件

「常勤役員」 の要件は下記のAまたはBのどちらかの要件を満たす必要があります。

 【常勤役員の要件】
(A) 建設業に関し二年以上役員等としての経験を有し、かつ五年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る)としての経験を有する者
(B)五年以上役員等としての経験を有し、かつ建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有する者

〈具体例〉
(A)の例:建設業で2年以上の役員経験あり、かつ5年以上営業部長などの役員に次ぐ地位としての経験ありなど
(B)の例:建設業での役員経験2年半、建設業以外での役員経験3年など

宇佐山さん

どちらの要件でも「建設業での経営経験」は最低でも2年以上は必要ということですね、建設業での経営経験が2年未満だと経営業務管理責任者にはなれないんでしょうか?

尾西行政書士

今回の改正で経営業務管理責任者は建設業での経営経験は5年未満でも就任が可能となりましたが、最低でも2年以上の経験は必要になります 

尾西行政書士

2年未満だと現状、経営業務管理責任者になるのは難しいですが、お困りの方は下記のブログもよければご参照ください

常勤役員を補佐する者の要件

「常勤役員を直接に補佐する者」 の要件は下記の要件を満たす必要があります

【 常勤役員を直接に補佐する者の要件】
「財務管理の経験」「労務管理の経験」「運営業務の経験」について、直接に補佐する者になろうとする建設業者又は建設業を営む者において5年以上の経験を有する者

〈具体例〉
例:財務管理、労務管理、運営業務の経験のすべての経験が5年以上ある人が補佐する者になる
例:財務管理、労務管理が5年以上ある人と運営業務の経験が5年ある人が2人で補佐する者になる

常勤役員を直接に補佐する者は1人で担当することも複数人で担当することも可能
( 例えば財務管理の経験をした人、労務管理の経験をした人、運営業務の経験した人の3人で分担して担当することも可能)

宇佐山さん

なるほど、補佐する者は1人ですべて担当してもいいし、複数人で担当するのもOKなんですね

宇佐山さん

1人で担当する場合は「財務管理の経験」「運営管理の経験」「運営業務の経験」×5年で合計15年以上の経験が必要なんですか?

尾西行政書士

いいえ、「財務管理の経験」「労務管理の経験」「運営業務の経験」は期間が重複しても経験として認められます

尾西行政書士

例えば平成20年4月~平成25年4月の5年間で「財務管理の経験」「労務管理の経験」「運営業務の経験」の全部を経験していれば、5年間ですべての経験があったとみなされます

宇佐山さん

じゃあ、それぞれの経験期間が重複していれば最短5年で補佐する者になれることもあるのですね

尾西行政書士

ただし1人で補佐する者になる場合は、財務管理、労務管理、運営業務のどれか一つの経験でも欠けてしまうと要件を満たさなくなってしまうので、すべての経験がカバーできているかしっかり確認しておきましょう

補佐する者の財務管理、労務管理、運営業務の経験の具体例とは

財務管理の経験とは
建設工事を施工するにあたって必要な資金の調達や施工中の資金繰りの管理、下請業者への代金の支払いなどに関する業務経験をいう。
※1例として、会社の経理部門の管理に関することや発注先への振込業務の経験等が該当するかと思われます。

労務管理の経験とは
社内や工事現場における勤怠の管理や社会保険関係の手続きに関する業務経験をいう。
※1例として、従業員の給与計算や健康保険などの手続きなどの労務管理業務を行っていたこと等が該当するかと思われます。

運営業務の経験とは
会社の経営方針や運営方針の策定、実施に関する業務経験をいう。
※1例として、部長などの高い地位で経営方針に関わっていた場合や、役員に次ぐ地位として運営に携わっていたこと等が該当するかと思います。

宇佐山さん

補佐する者にもけっこう色んな経験が必要なんですね… これらの経験に該当するかわからない時はどうすればいでしょうか?

尾西行政書士

これらの経験に該当するかどうかはっきりわからない時は申請先の役所に問い合わせしたり、事前相談にいくのがいいかと思います

経験、地位等の確認書類について

経営業務の管理責任者を「常勤役員+常勤役員を直接に補佐する者」で申請する場合、経験の確認書類がかなり多くなります。下記に経験ごとに確認書類の例をまとめています。

【建設業に関しての役員等の経験の確認書類】
確定申告書、工事の契約書、商業登謄本の写しなど(許可会社の場合は、許可通知の写しと謄本の写しなど)

【建設業以外での役員等の経験確認書類】
商業登謄本の写しなど

【役員等に次ぐ地位あった経験の確認書類】
法人の組織図、年金の被保険者記録照会回答票、雇用保険被保険者の写しなど

【常勤役員等を直接に補佐する者の現在の地位の確認書類】
法人の組織図の写しなど

【「財務管理」「労務管理」又は「業務運営」の業務経験の期間を確認するための確認書類】
業務分掌規程、過去の稟議書、組織規程、人事発令書の写しなど

宇佐山さん

わあ、けっこう確認書類が多いんですね、申請先の都道府県や整備局によって確認書類も違ったりするんでしょうか?

尾西行政書士

そうですね、確認書類は申請先によって異なってくる可能性がありますので確認書類についても申請する前に役所に確認、相談いただくのがベターかと思います

今回の改正について、緩和と言うには内容と書類が複雑

宇佐山さん

要件緩和って聞いてたのに、内容も書類もけっこう複雑で申請するのはちょっと大変そうですね…

尾西行政書士

そうですね、書類等がかなり複雑でお客様に準備頂かないといけない書類も増えるので、建設業で5年以上の役員経験等のある方がいらっしゃれば、その方に経営業務の管理責任者に就任頂くことが一番無難です

宇佐山さん

建設業で5年以上の役員経験があれば、確認書類がシンプルになって揃えやすいのでお客様の負担も少なくてすみますね

尾西行政書士

その通りですね、経営業務の管理責任者を「常勤役員+常勤役員を直接に補佐する者」で申請するのは、建設業での経験が5年未満で、かつ準ずる地位の経験もなく、他に経営業務の管理責任者に該当する方がいらっしゃらない場合の最終手段になると思います

宇佐山さん

う~ん、最終手段ですか… 
今回の改正の制度って実際使われているんでしょうか?

尾西行政書士

当事務所では2021年4月頃に大阪府で 「常勤役員+常勤役員を直接に補佐する者」 で経営業務の管理責任者の変更届を提出しました

尾西行政書士

大阪府ではこの制度を使ったのはその時の申請が初めてだったようです、ややこしい制度ですが大阪府の手引きでは確認書類等について比較的わかりやすく説明されていると思います

まとめ

<まとめ>
常勤役員 +  常勤役員を直接に補佐する者  でも経営業務の管理責任者になることができる
・ 建設業で5年以上の役員経験のある方に経営業務の管理責任者に就任頂くことが一番無難

尾西行政書士

当事務所でも経営業務管理責任者の変更届などの代行を行っておりますので、お困りの際は下記までお問合せください。

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この記事を書いた人

平成28年開業。
大阪市中央区の行政書士事務所です。
建設業許可等の申請代行を中心に取り扱っております。

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